どうして英単語(爾後、「単語」)が覚えられないのか? 基本は「毎日やる」ことだ。当たり前の話である。まずは記憶のメカニズムから説明しよう。記憶にはある一定の「閾値(いきち・しきいち)」というものが存在する。「このラインを越えてしまえば永遠に忘れない」という一線のことだ。たとえば父親の顔を忘れる人はいないだろう。朝起きて「あんた誰?」などとおやじに言ったらぶん殴られる。どうして忘れないか? 毎日会っているからだ。だから単身赴任しているサラリーマンがたまに自宅にもどると幼い子は、「あのおじちゃん誰?」と聞くのである。毎日15分でいい。一日も休まずやることだ......





:以下の文章は「限定用法」と「制限用法」という文法用語の使用法をめぐる問題に関してのものです。これらの文法事項自体を初学者向けに解説するものではないので予めご了承ください。

「制限用法と限定用法は実は別物である...」

「分詞の限定用法は前置修飾の場合のみで、後置修飾の分詞は限定用法ではない...」

「関係詞の非限定用法なる用法はそもそも存在しない...」

...いったいどういうことでしょうか? これらのポイントを個々に見ていく前に、まずは「限定用法」「制限用法」という文法事項の基本(と一般的にされているもの)を少しおさらいしておきましょう......






「東京都教育委員会は、立川市で体験型の英語学習施設を2023年1月に開業すると発表した...小中学生らが学校の授業や行事などで利用することを想定し、英語の必要性を体感できるようにする。JR立川駅から徒歩約8分の場所に学習施設「TGG グリーンスプリングス」(立川市)を整備する。学校の利用が中心となり、休日などには一般にも開放する。海外を疑似体験できる場面や空間を用意し、児童・生徒のグループに英語話者の担当者がつきながら英会話やグループ活動を案内する。最大で1日320人が利用できる。都立学校の中学生の場合、1日コース(6時間30分)の利用料金は1人当たり税別5800円。」(詳細:日本経済新聞




こちらも「英語嫌い増産器」と言える。be動詞はそのままnotをつけたり文頭に出したりすれば否定文・疑問文を作れるが、一般動詞は「それはまかりならん! 助動詞doを使うのだー!」というのだ。「何で?」という生徒の疑問に答えてくれる先生はほとんどいない。「これでーいいのだー♬」ではまるで「天才バカボン」ではないか。「訳わかんねー!!」と憤りを感じた中学生諸君。自信を持って欲しい。君たちの感覚こそ正常なのだ。そもそも同じ動詞なのに用法が異なるなどありえない。そんなことをしたら文法がひっくり返る。こんなダブル・スタンダード(二重規範)が許されている言語は、聞くところによれば「英語だけ」。何かが間違っているのだ......






不定詞句の前に「for <人>」を加えることで、その不定詞句内の動詞の「意味上の主語」を表すことができます。不定詞句内の動詞が表す動作の主体は、そのままだとそれを含む文の主語が表す人になりますが、文の述語動詞の主体(つまり主語の人)と不定詞句内の動詞の主体が別の場合は、後者を「for <人>」の形で明記しなければなりません。
  • We have something to do.(私たちには[私たちが]やるべきことがある。)
  • We have something for you to do.(君がやるべきことがある[君にやってもらいたいことがある]。)
  • I stood aside for him to enter.(彼が入れるように私はわきに寄った。)
  • For him to think a thing like that is, in itself, an indication of his wavering mind.(彼がそんな事を考えること自体、心の迷いの表われだ。)
では、不定詞を受ける仮主語itの定番例文「It is important for you to study English.」の場合はどうでしょうか? この場合は、以前にも「不定詞を受ける仮主語it構文におけるfor前置詞句の扱い」で書きましたが、①「for you」を不定詞句の意味上の主語として解し「君が英語を勉強することが、重要なのです」としてもいいし、あるいは②「for you」を主格補語の形容詞importantにかかるとして「英語を勉強することは、あなたにとって重要です」としても構いません。

形容詞importantやnecessaryの場合はいずれの解釈も可能ですが、実は他の形容詞にはこのいずれか一方の形しか用いることができないものがあったりします。

ロイヤル英文法 §227

〈It is ~ for A to...〉「...することは~である」という意味で、ある事柄についての判断を述べる形である。もとは「...することはAにとって~である」という意味でforが用いられていたのが、for A to...の形で,意味上の主語としてto不定詞との結びつきのほうが強くなったものであるとされている。そこで、「~にとって」の意味が依然として強く感じられるものと、to不定詞の意味上の主語の性格の強いものとの2つに分けて考えるとわかりやすい。前者は原則としてthat節に書き換えられないが、後者は書き換えられる。ただしこの区別は厳密なものではなく、両方の性格を持つものもある。

例えば:
  • ⓈIt Ⓥis Ⓒgood for your health to get up early.(○早く起きることは、健康にとって良い。)
  • = ⓈTo get up early Ⓥis Ⓒgood for your health.(〃)
  • ≠ ⓈFor your health to get up early Ⓥis Ⓒgood.(×健康が早起きすることは、良い。)
  • ≠ It is Ⓒgood Ⓢthat your health gets up early.(〃)
上の例文の「健康」は人体の状態でしかありませんから、「早起きする」という行為の主体になることはできません。「dangerous、difficult、easy、hard、(im)possible、safe、tough、useless、usual」などの難易を示す形容詞の多くはこのパターンになります。

私の指導では、大学受験の実践演習に入っている生徒が「理解が浅い」と見受けられる文法事項に遭遇した場合、「英文法・語法問題集」を逐一開いてチェックを入れさせているのですが、Vintageの「不定詞の意味上の主語」に関する箇所が:

Vintage
となっていまして、何でよりによって「dangerous」を用いたものにしているのかと...Vintageは多くの高校で使用されているだけに、まったくもってやっかいな話です。






平成23年度の自治医大の英語の入試問題の大問1は、ネイティブアメリカン(かつては「インディアン」と呼ばれたアメリカ大陸の先住民)のメンタルヘルス問題を扱うJames Burgess Waldram著『Revenge of the Windigo: The Construction of the Mind and Mental Health of North American Aboriginal Peoples』からの抜粋で、「ネイティブアメリカンはアル中の酒乱だ」という昔からある人種的偏見の妥当性を検証するような内容になっています。

実際アルコール依存症はネイティブアメリカンの間で大きな社会問題になってはいるのですが、これは無論彼らがアルコールに耽溺する粗野で怠惰な人種であるからということではなく、①ネイティブアメリカンがヨーロッパ人に比べ遺伝的にアルコール耐性が低いことと、②「インディアン居留地(Indian reservation)」に移住を強いられて先祖伝来の住み慣れた土地と自活の道を奪われアルコールに逃げ場を求めざるをえなかった結果であり、そもそも③ネイティブアメリカンに独自の飲酒文化はなく、ヨーロッパ人の飲酒文化を取り入れたことに端を発しています(参照:ワシントンポスト紙ウィキペディア)。

それで、問6にこのような問題があります:



The initial reaction of the Indians to alcohol appeared to have been restrained, often avoidant, and that when they drank, very few Indians had no experience with alcohol prior to its introduction by Europeans; there were no rules in place for how to drink or how to behave when drinking. This situation changed over time, however, as the Indians

正解の選択肢はどれでしょうか? 前後の文脈から考えれば選択肢Aが適切です。しかし下線部(6)の「very few Indians had no experience with alcohol prior to its introduction by Europeans」とは一体どいうことでしょうか? 「quite a few(かなり多数)」ならわかりますが、「very few(極小数)」のネイティブアメリカンが「had no experience(アルコール経験を持たなかった)」では二重否定のようになり、ほとんどのネイティブアメリカンがヨーロッパ人により飲酒文化が導入される以前より飲酒経験を持っていたことになってしまいます。この文だけを取れば正解はBになってしまいますが、文脈的には明らかにおかしな話になります。

原文では以下のようになっています:



数カ所改変されていて、厳密な抜粋ではなく翻案(adaptation)になっています。それ自体は別に構わないのですが、問題の部分は元々「the vast majority of Indians had no experience with alcohol(大多数のネイティブアメリカンが飲酒経験を持っていなかった)」であり、意味が真逆になっています。

ネイティブアメリカンが酒を飲むようになったのはヨーロッパ人により酒が新大陸にもたらされてより後からのことであり、さらに(ネイティブアメリカンに対する偏見である)深酒して暴れるような飲酒の仕方もヨーロッパ人から学んだものであり、ネイティブアメリカンは当初は飲酒の際そのような問題行動(「problem behavior」)は起こさす、むしろ「抑制(restrained)」された、酒を「避ける(avoidant)」ような態度だったとあります。原文のこの部分は抜粋文では省略されており、省略すること自体は別に大きな問題ではありませんが、どうもこの箇所で用いられた「very little」がその後に続く翻案された箇所に「very few」になって紛れ込んでしまったようです。


New Treasure Stage 2 Lesson 12に関して



現在多くの中高一貫校で採用されている英語の検定外教科書『New Treasure』は、Stage 1〜3をそれぞれ中学の1学年で終わらせるペースで学習していくと中3(Stage 3)の終わりまでに高校英文法の主要項目を一通り網羅し終える形になります。公立中学であれば中3の2学期に学習する関係代名詞はStage 2のLesson 10にて、一貫校なら中2の2学期頃には学習し終えます。Stage 3のLesson 1で学習する過去完了からはもう高校英文法の範囲に入っていく形です。(注:大学受験のない大学附属校の中にはより遅いペースで学習を進めていき、高校に入ってからもしばらくはStage 3を継続使用している例もあります。)

このため、『New Treasure』は公立中学で使用されている検定教科書に比べてかなり濃密に詰め込まれた内容になっています。例えばStage 1(第2版)のLesson 12が比較、Stage 2 Lesson 2が不定詞、Lesson 6が現在完了、Lesson 7が受動態となっていますが、これらを矢継ぎ早にそれぞれ1レッスン内で終わらしていきます。定期試験では2、3レッスンほどまとめて出題範囲にされますから、特に現在完了→受動態など重い文法事項が連続するような時には消化不良のまま済ましてしまわないよう注意が必要です。

『New Treasure』の中でも特に重い内容になっているのがStage 2のLesson 12です。この章では①間接疑問、②感嘆文、③付加疑問、④比較の倍数表現と⑤最上級の書換そして⑥「可能な限り〜する」(例:as soon as you can)の表現を一気に学習します。これらは単独では現在完了や受動態などの主要文法項目と比べると重要度に関しては少し落ちる内容ではありますが、いずれも英語文章で頻繁に用いられるマスター必須の重要表現であり、やっかいなのはこれら文法事項が互いに関連性が薄いためまとめて学習するのには少し負担があるという点です。また、現在完了や受動態のような主要文法項目であれば一般的な文法問題集や参考書でも独立して相当量の紙面を割いてありますが、間接疑問や感嘆文に関しては独立した章で扱われることはあまりなく、多くの場合は他の細かい文法項目と一緒くたに扱われて掲載されているため演習問題が少なかったりします。『New Treasure』準拠の『文法問題集』と『Workbook』でも同じく十分な演習量を保証してくれるものにはなっていません。

英語は暗記する分量が多い科目ですが、だからこそ効率の良い学習のためには暗記の系統的な軽重付けが重要になってきます。単語・熟語であれば網羅性を優先して質より量の暗記を実施していっても構いませんが、英語文章において頻繁に使用されるような重要文法や特殊構文を定期試験前にとりあえず頭に詰め込んでおくというようなお座なり学習で済ませるのは芳しくありません。

茗渓予備校では、こうした独学では対応が困難な学習分野に関しても、プロ講師がさまざまな工夫を凝らした教材を駆使して生徒の指導に当たっています。コチラにサンプル教材を公開してありますので、参考にご覧いただければ幸いです。




「大学入試の在り方を検討する文部科学省の有識者会議は22日、2025年1月以降の大学入学共通テストにおける英語民間検定試験と記述式問題の導入について『実現は困難と言わざるを得ない』とする提言案を示した。文科省は提言がまとまり次第、今夏に導入断念を正式決定するとみられる。文科省は19年11~12月、公平性の担保が難しいなどとして21年1月に初実施した共通テストへの導入見送りを発表していたが、再検討でも課題解決の見通しが立たなかった」(詳細:共同通信)。