難解な英単語で苦しむ受験生諸君のために、ラテン語・ギリシャ語から効率的に、面白おかしく暗記するために単語集を1冊作りました。茗渓予備校のHPから参照できますので是非ご利用ください。覚えにくい単語があったら「索引」を引き「見出し語」を参照する...という方法がいいかと思います。

さてこの本の原型が作られたのはかれこれ12年も前のことです。当時指導していた生徒さんのご父兄から「英検1級を取らせて欲しい...」との申し出を受けました。彼女はバリバリの帰国子女でしたから読解・リスニングは「お手の物」。難儀したのは悪名高き「英検1級単語」です。当時彼女は高1になっていましたから「丸暗記」させている時間はありません......

ギリシャ そこで当時同僚だったS先生に水を向けました。「先生、1級をお持ちですよね。1級単語をどう攻略されました? 」...と。「全然勉強してませんよ。僕、ギリシャの大学にいたでしょ? ですから単語を見ただけで大体の意味は予想がついてしまうんです! 」S先生は言下に断じられました。「その手があったかー! ! 」という思いでした。「語源から類推する」という方法を使えば彼女の負担を最低限に抑えられるのです。英語の単語は45%がラテン語、15%がギリシャ語起源(計60%)です。また高度な英文になればなるほどそのシェア(占有率)は上がります。すべての学問は「ギリシャ発・ローマ経由」(本当は「エジプト発」)であるからです。

この手法に最初に気づいたのはかの文豪「森鴎外(森林太郎)」だとは後日知ったこと。彼は医者でもあったので難解な医学用語を効率的に暗記する方法として用い、次々に脱落してゆく医学生仲間を横目に「何と非効率的な...」と冷ややかに眺めていたとか...。

ターゲット 因みに「ターゲット1900単語集」で語源を虱潰しに辿ってみたところ、90%がこの両言語に起源を持つものでした。当時ラテン語・ギリシャ語を勉強し始めていた私の、ランダムハウス大英和辞典をひっくり返す日々がそこから始まりました。すると「出るわ、出るわ...」。ルパン三世ではありませんが、まさしく「お宝の山」でした。それを冊子にして彼女にも手渡しました。「あ! このラテン語! フランス語と同じだ! 」などと小気味よい反応が返ってきたこともありました。何とか無事に1級にも合格してくれ、ご父兄にも面目を施すことができた...という次第です。

その後10年が過ぎ、私のラテン語・ギリシャ語力も当時とは比較にならないくらい上達しました。そこで久しぶりにこの冊子を手に取ったところ、不備・誤植が散見されました。突貫工事でしたから仕方ない部分もありました。そこで再度加筆・修正を加えたのが本書です。サンプルとしてここにはfacio(「ファキオー」<>作る・する)の派生語を掲載しました。





facio[ファキオー] - facere[ファケレ] - feci[フェーキー] - factus[ファクトゥス] <>make(「作る・〜に...させる」);do(「なす」)

これは最重要単語だ。fac/fic/fec/fuc/fea...と形を変え、いたるところに潜んでいる。make an effort(「努力する」)など、make(「作る」)をdo(「する」)の意味で使うルーツがここにある。また英語で-fy(「〜させる」)などという動詞が無数にあるが、これもこのfacioだ。



ピラミッド
artifact(工芸品)
o-o-p-art-s(「オーパーツ」)というのを聞いたことがあるだろうか。 Out-of-Place Artifactsの頭文字をとったもので、「場違いな工芸品」という意味だ(参照:arma)。 「そこにあるはずのない物」「あってはならない物」と言い換えてもいい。

最も有名な例がエジプトはギザ台地に今も聳え立つ「三大ピラミッド」だ。当時の技術で建造できたはずはないからだ。ギリシャの歴史家「ヘロドトス」が「ファラオ(王)の墓だ!」と書き残してしまったことで、「クフ王の墓」との記述が歴史の教科書に載ることになった。しかしヘロドトスは「そうエジプトのガイドが言っていた...」と書き残しただけなのだ。

affect①(影響する)
名詞はeffect。「〜に対して(<af=ad>)作用する」の意。affect②とは別の単語(参照:ad)。

affection(愛情)
人の心に対して影響を与える。

affect②(〜のふりをする)
外見をとり繕う(作る)こと。

artificial(人工的な)
参照:arma

affair(事件・出来事・業務)
また「情事・浮気」などという意味もある(参照:ad/energeia)。



defect(欠点)
要するに「作られ損ない...」だ。deは「否定」(参照:de)。

deficiency(不足・欠乏)
AIDS(エイズ、後天的免疫不全症候群)のDがこれに当たる(詳しくは参照:muto)。

defection(離反・背信・逃亡・不備・欠陥)
「離れて(<de>)作られた物・行われた事」が原義。

deficit(赤字)
一方「黒字・余剰」はsurplusだ(参照:surgo)。

difficult(困難な)
fic(行うこと)ができ(di=dis)「ない」から。参照:dis

defeat(打ち負かす・敗北)
何もでき(<facio>)なく(<de>)させること。参照:de



effect(効果・影響)
行い(<fec>)の結果として外(<e=ex>)に出てきた物...の意。参照:ex

effective(効果的な)
efficient(効率的な)
efficiency(効率)
こちらもe=exだ。参照:ex/-ans



fact(事実)
「実際に行われたこと...」が原義。「そんなのファクトじゃない!」などと討論番組でよく使う。日本語を使えばいいものを...。こういった輩は「自己顕示欲」の奴隷なのだ。

fake fake(「偽物」)
フェイク・ニュース」などですでに日本語。騙すために作られたもの...の意。fac=fakだ。

factory(工場)
物を作る場所。

faculty(能力)
「行うことができる力」より。

facilitate(容易にする・促進する)
「行うことができるようにする」が原義。

facility(器具・設備)
これを使って物を作る。cooking facilities(調理器具)などと言う。

facsimile(ファックス)
同じ(<sim=same>)ように作られたもの。参照:sim

forfeit(没収する)
参照:foris

face(顔)
表情は作るもの。日本語でも「顔の造作(ぞうさ・ぞうさく)」という。そういえば「化粧」も顔を作っているわけだが...。参照:fabula

上杉鷹山 feasible(実現可能な)
「なすことができる」の意。「成せばなる、成さねばならぬ何事も、成らぬは人の成さぬなりけり」(上杉鷹山)だ。

feat(早業)

feature(特徴・呼び物)
発音に注意! 「フーチャー」だ。「フーチャー」(future、未来)ではない! こちらはfuturus(フトゥールス)でesse(be動詞)の「未来分詞」だ。参照:est

faction(派閥)
「利益中心に作られたもの...」の意。

function(機能)
ある目的を達成するために作られたもの...の意。



infection(感染)
体の中(<in>)に作用する。参照:in①。

infectious(感染性の)
参照:-osus



malfunction(機能不全)
「悪く(<mal>)作る」が原義。参照:malus

magnificent(壮大な)
参照:magnus

manufacture(製造する)
手(<manu=manus>)で作ること。「マニュファクチャー(工場制手工業)」などと、歴史の時間に登場したはず。参照:manus



perfect(完璧)
徹底的(<per>)に作られたから「完璧」だ。「璧」の字を間違えないこと! 下は「土」ではなく「玉」だ。「傷のまったくついていない玉」のこと。「双璧」も同じだ。参照:per

prefecture(県)
もともとは古代ローマ帝国の行政長官の意。文字通り「前に(<pre>)立って政治を行う(<fec>)人」だ。そこから「行政区」の意味が生まれた。参照:pre

profit(収益)
前に(<pro>)向かって作り出すが原義。参照:pro



significant(重要な)
重要な物には印(<sign>)をつける(<make>)からだ。参照:signum/-ans

superficial(表面的な)
super(「上べ」)だけ作られた。参照:superus

sufficient(十分な)
「上(<suf=sur>)に作る」⇒「取って代わる」⇒「十分である」と変化した。参照:sur/-ans

sufficiency(十分なこと)

satisfactory(満足のゆく)
satis<>=enough)だから「十分に作る」だ。

satisfaction(満足)

surface(表面[サーフス])
直訳すれば「上(<sur>)の顔(<face>)」だ。「サーフェイス」などと読まないこと。surface areaで「表面積」となる。数学で登場する。「体積・容積(V)」についてはvolvo参照。参照:sur



traffic(交通)
trans(越えて・横切って)+fic(作用する)が原義。参照:trans


-fy
classify(分類する)
参照:calo

identify(身元を明らかにする)
確認する」参照:idem

justify(正当化する)
参照:jus

magnify(拡大する)
参照:magnus

modify(修正する)
参照:modus

satisfy(満足させる)
satis<>)=enough

unify(統一する)
参照:unus


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