K I R I
 — 茗渓予備校通信 2023年 1月号

いまあるべき国語力について①

年も変わり、現高2生も受験までほぼ一年となり、本格的な受験勉強へと突入することとなります。運動にせよ何にせよ、何事においてまずはウォーミングアップが必要で、さらに言えばそもそもの基礎体力、基礎作りがあってはじめてのことです。そこで、現在あるべき国語力のチェックとこれから進めていくべき学習(トレーニング)を確認しておきましょう。

受験形式の確認

具体的な国語力のチェックに入る前に、まず根本的なこととして確認しておいていただきたいのは、自分は一般受験で進めていくのか、それとも指定校推薦、AO入試などの形式にウェイトを置いていくのか、ということです。それがはっきりしないでなんとなく勉強しているのでは、とくにAOや小論文入試は結局間に合わなくなります。ちなみに指定校推薦の場合は、まず自分の高校にどのような大学への何人の指定校推薦枠があるかと、現在の自分の評定平均を把握することです。共通テスト開始などにより、指定校推薦枠の争奪は以前から激しくなっていましたがさらに一層厳しくなっています。AO・推薦入試の場合も、近年の私大上位校の難化(一般受験の枠の減少)により、とくに上位校は非常に熾烈な状況となっています。ただ早慶上智の場合は一般入試を睨みつつ一般入試以外の多様な推薦入試を利用して合格を勝ち取っていく生徒さんも近年増えています。また準難関校や中堅校はしっかりと対策を講じて真剣に準備をすれば、AO・推薦もひとつの選択肢ではあります。各校多様な形式を導入しており、条件なども様々ですので、まずは早目に検討を始め、自分の能力が最大限に発揮できる入試形式を探すことから始めるのがよいでしょう。社会科が苦手な人にはひとつの受験パターンとは言えます。

現在の国語力を具体的に確認したい方に、現代文・古文の確認テストを用意しました。希望の方は直接大川までお申し出いただくか、担当の先生を通してご連絡ください。

現高2生の国語力

現代文

現代文は、これまでの学習過程、さらにいえば生育過程を反映した教科と言えます。どういうものに関心を持ち、どういうふうに学んできたかがすべて反映されています。また、文章に触れてきた経験は読解力を大きく左右します。ただ、いわゆる小説を中心とした読書の経験は中学入試などには強い相関性がありますが、学年が進むにつれて相関性は下がってきます。読解すべき文章が小説・物語といった文学的文章から、社会や科学などを扱う評論などの論理的文章へと変わってくるからです。ですから、新聞や新書などの論理的な文章をまず意識して読むことが大切です。そして、知らない言葉や事柄が出てきたらその都度辞書や事典で調べることです。いまなら、即ググってもいいでしょう。そして、日々のニュースやニュース解説から、現在社会で何が起きていて、どういうことが問題となっているのかそうしたことにも関心を持つことも大切です(当然芸能人のゴシップ以外です 笑)。その上で、読解力の具体的な目途としては、共通テスト試験の第一問(論理的文章)程度の文章がまず読んで理解できることです。また、漢字は案外軽視されがちですが、漢字の正答率が60%以下であると、合格率は大幅にダウンします。受験時では漢字はほぼ満点、悪くても1問間違い程度に収めてほしいところです。苦手であれば、一年間コツコツやることです。10数年の積み残しなのですから。

古文

古文は正しい手順できちんと学習していればそれなりに読めてくるものなのですが、それが全く読めないという生徒さんは結構います。原因は二つ考えられます。一つは古文単語をきちんと覚えていないといった自分の責任、もう一つは自分で読めるようにする正しい指導がなされていないという気の毒な原因です。とくに後者ですが、主要教科の中で一番、指導方法の工夫がなされていないのが古文ではないかと感じています。文法の説明をおざなりに済ませただけであとはただ、「各自訳してみろ」と言うばかり。自ら読めるための指導をろくにせず、指導要領に沿って各学年に充てられた文章をこなすだけの先生のなんと多いことでしょう。次の話はある都立高生に聞いたことで、よくある話です。高2の古文の担当はA先生とB先生、3年に進級してクラス替えの結果、クラスの半分はA先生の元生徒、もう半分はB先生の元生徒。単語と文法を徹底し訳出の指導を受けてきたA先生の教え子たちは古文が訳せるが、ただ訳を読み上げ写させて教科書をこなすだけのB先生の教え子たちは当然全く古文が読めない。そういうことが毎年のように起こっているのに学校というところは教師の独立性の尊重とかで全く改善されないのです。たしかに、そこまで極端ではないにしても、自分で訳せるようにするための指導は一般的にあまりなされてはいません。では、どうすればよいのでしょうか? 実はシンプルな方法です。まずは、古文単語をしっかり覚えること。古典文法を理解し、文法を活かして文章を読解したり訳出したりすること。そして(ここからが、あまり学校とかでは指導しないところですが)、つねに主語を意識することです。英語などと違って日本語は主語を示さないでも文章が書けるし読めるのです。子供の時から慣れているので、現代語であれば問題はないのですが、古文になるととたんに思考停止に陥ります。それを現代文と同じように、主語が示されていなくても、言葉のルールや前後関係などから主語を補って理解することが大切です。

では、今の時点として身に付けているべきレベルはというと、古文単語なら最低200語レベル(高3生の夏休み前で300語レベル)。古典文法なら助動詞・敬語はほぼマスターしていて、助詞も主要部分は理解できるといったレベルです。その上で、読解としては宇治拾遺などの説話や伊勢物語などの歌物語がだいたい理解できるといったところが学力のメドと言えます。とはいえ、なかなかそこまでできていないのも現状だとは思います。

漢文

漢文はまず自分にとって必要かどうか、どの程度まで必要なのかをまず確認することです。国公立大学では共通テストで必ず出題されますが、二次試験では大学によりますが出題する大学は多くはありません。私立大学は文学部以外では基本出題されません。(ただ早稲田は基本出題されます。)共通テスト利用で私大受験の場合、漢文まで必要な大学もありますが中堅校以下には現古あるいは現文のみで受験できる大学や学部もあります(MARCHの一部にもあります)。共通テスト利用はあくまでも滑り止めと考えた場合、漢文はナシの選択もひとつの作戦です。受験に使うのだとすると、返り点・書き下しは完璧にできた上で、句法は基本部分はマスターしていること、「蛇足」「知音」程度の文章は初見で読めることは、最低限必要でしょう。