K I R I
 — 2022年 1月号

高校数学が変わります

新年あけましておめでとうございます。2022年が皆様にとってよい年になるよう、講師・スタッフ一同、心よりお祈り申し上げます。

さて、教育・学習の面で、2022年の大きな出来事は、新学習指導要領(高等学校)の開始です。この4月から高校1年生になる生徒さんの学年から、この新学習指導要領での学習に切り替わります。

今回は、大きく様変わりする数学について、スポットを当ててみました。現行課程(高2生以上)と新課程(高1生以下)を比較・対比すると、次の表のようになります。

図表

数学 I ・A 整数が消えて、期待値が復活

まず一般的な高校1年生が学習する数学Iと数学Aについて、見てみましょう。

数学Iについては、大きな変更はありません。

数学Aについて、「整数の性質」がなくなり、替わりに「数学と人間の活動」が入りました。日常生活に絡めた設定で整数や空間座標を扱う単元です。その意味では、現行の共通テストの問題設定に親和性があり、抽象的な数学から、具体的な数学へ移行する最近の傾向が現れています。

では以前の「整数の性質」は完全になくなるの?というと、「整数の性質」の中の「有限小数・循環小数」が「数学I」に移行されます。また「ユークリッドの互除法」と「記数法」は、そのまま「数学と人間の活動」の中に吸収されます。

また「場合の数と確率」に「期待値」が8年(10年)ぶりに復活します。さらに今回初めての「頻度確率」が登場します。

これまでは、例えば「赤玉3個・白玉7個の合計10個から1個無作為に選んだとき、その玉が赤球である確率は?」と訊かれたら、全10個中の3個なので確率「3/10」と個数ベースで答えてきましたが、今回の「頻度確率」では「1000年に1回」とか「3日に1回」とか、時間ベースでの確率も扱います。

数学II・Bベクトルが消えて、統計が表舞台に!

次に一般的な高校2年生が学習する数学IIと数学Bについて。

数学IIについては、数学Iと同様に大きな変更はありません。

それに比べて、数学Bは大きく変化します。今回の改定でもっとも劇的に変化するのは数学Bでしょう。

まず「ベクトル」が数学Bから、なくなってしまいます。「ベクトル」は数学Cに移ります。そして、代わりに「統計的な推測」が必須化されます(これまでも「統計的な推測」は数学Bに掲載はされていましたが、所謂「第3の選択肢」であって、直接、取り扱うことは稀でした。もちろん、センター試験・共通テストの数学Bでも、選択問題として存在はしていましたが、大抵の受験生は「数列」と「ベクトル」を選択してきました)。それが今回の改定で前面に出てきたのです。それではどんなことを推測するの?といえば、

「このサイコロを12回も投げて、1の目が1回しか出ないぞ!」

「ふつう、2回くらい出てもよくない?」

「このサイコロはイカサマだ!」

と推測します。それが、ただの思い込み(言いがかり)か?本当にそうなのか?数学的に判定するのです。

このように統計分野が充実してきたことに比べ、純粋数学たる代数・幾何の扱いが年々軽くなってきています。昭和~平成初頭の高校生は、文科系でも「ベクトル」・「行列」・「2次曲線」は必須でした。その後「行列」が理科系のみに変わり消え、「2次曲線」が理科 系のみに変わり・・・、ついには最後の砦たる「ベクトル」まで、数学Cに移行してしまいました。ただし、今後の共通テストでは現行の『数学II,数学B』に新たに『数学C』が加わるようで、国公立大を受験する文系の生徒なら「数学C」の分野を少なくとも一つ学習する 必要があると予想されています。この場合、結局「ベクトル」を学習することになります。

数学III・Cが復活して、スッキリした構成に

最後に一般的な理科系の高校3年生が学習する数学IIIと数学Cについて。

数学IIIについては、数学I・数学IIと同様に大きな変更はありません。「平面上の曲線と複素数平面」が新設の数学Cに移りました。もともと、この単元だけ異質で、無理やり押し込めていた感じでしたので、これで数学IIIは「極限」→「微分法」→「積分法」とスッキリした構成に戻りました。

新設(というか復活)した数学Cは、上述の「ベクトル」と「平面上の曲線と複素数平面」、そして「数学的な表現の工夫」で構成されます。「数学的な表現の工夫」は離散グラフや行列を扱いますが、大学入試にどの程度の重要性で関わってくるかは、未知数です。