K I R I
 — 茗渓予備校通信 2024年 2月号

2024年度大学入学共通テストが実施されました

1月13日・14日の両日、2024年度大学入学共通テストが、全国668会場で実施されました。共通テストの志願者数は、約49万人と前年から2万人減少しました。志願者数が50万人を割り込んだのは1992年の大学入試センター試験以来、32年ぶりのことです。要因としては、18歳人口がここ数年で最大の 減少幅となった事が考えられます。また既卒生志願者は年々減少しており、共通テストの志願者全体の85%は現役生が占めています。

出題傾向をみると、昨年から大きな変化はありませんでした。各教科・科目とも「思考力・判断力・表現力」を問う出題方針に則った出題で:
  • 日常の事象を題材とした問題、
  • 授業で学習する場面を想定した問題、
  • 複数の資料やデータをもとに考察する問題など、
これまでに出題された共通テスト特有の出題傾向が継続されています。

ただし、来年の2025年度からは、いわゆる「新課程」としての初めての共通テストとなります。現行の共通テストとは、いくつか変更点があります:
  • 出題教科に「情報」が新設されます。
  • 出題科目のスリム化が図られます(例えば、現行の「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の4科目は、まとめて「物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎」の1科目として出題されます)。
  • 国語は現行の共通テストより10分延長して90分になります。
  • 数学IIは10分延長して、現行の数学Iと同じ70分になります。
今回は、英語・数学・国語に関して、概況を報告いたします。

図表

まず「英語」ですが、「英語(リスニング)」で平均点がアップした一方、「英語(リーディング)」では平均点がダウンしました。

「英語(リーディング)」の出題形式は昨年と同じく大問6題からなる構成で、配点・設問数・マーク数とも、変化はありませんでした。出題内容は、身近な話題を扱った英文から、論理的文章まで多様な題材が扱われ。第2問B以外のすべての大問で図・表・イラストが使用されており、複数の情報源から概要・要点を把握する力が求めらました。英文の語数は、第1問~第3問はそれぞれ約180語~320語、第4問は約640語、第5問は約960語、第6問Aは約610語、第6問Bは約750語となっていて、試験全体の総語数は昨年より少し増加し、約6300語でした。単語数が大きく増加したことから、高得点を取り難かった様子がうかがえます。「英語(リスニング)」の出題形式も、昨年と同じく大問6題からなる構成で、配点にも変化はありませんでした。読み上げ語数は約1570語で、これも昨年とほぼ同じです。「英語(リーディング)」と同様に、イラストやグラフ・表が多数使用されており、単に英語を聞き取ることができればよい訳ではなく、目的に応じた思考力・判断力が問われる内容になっていました。

「数学」は、「数学I・数学A」「数学II・数学B」ともに平均点が前年比ダウンとなっています。

「数学I・数学A」は、必答問題が2題・選択問題3題から2題の選択の合計4題を解答する形は、昨年度までの形式と同じでした。ただし来年度からは「新課程」になり、形式も変わるので、この点注意が必要です。全体の分量も昨年度と同程度でした。「前半の設問が後半の問題の丁寧な誘導・ヒントになっていること」が多く、題意に従って、会話文を読み進めていく(本来の純粋数学とは違った)能力が必要です。今年度は、最後の設問で、昨年よりも高いレベルを要求してくるものもあり、この辺りが、全体として昨年よりもやや難化要因の一つと考えられます。

「数学II・数学B」では、必答問題を2題、選択問題3題から2題を選択、合計4題を解答する形式は、前年度と同様でした。必答問題では、論理の流れを問う設問が多く、これが平均点が前年比ダウンの一因と考えられます。選択問題では、ベクトルは標準的な内容でしたが、数列がやや難しい内容だったため、昨年よりも厳しいセットでした。さすがに「数学II・数学B」の内容にまで、無理やり会話文を絡めてくる傾向は薄れてきていて、過去のセンター試験の形式に近づきつつあります。

最後に「国語」ですが、現代文では正解を選びやすい素直な出題が多かったことや、古文では読みやすい文章だったことなどが要因となり、平均点が大幅に上昇しました。