大学入試における小論文

入試科目としての小論文は、多くの国公立大学の後期日程試験、一部私立大学の国語に代えての入学試験、AO入試、推薦入試等で取り入れられています。通常の学科試験では十分に知ることのできない論理的思考力、創造性・発想力、文章を書く力、問題意識、常識の有無等をみることによって、進学適性を把握するのが目的であるとされています。したがって、大学・学部によって方法や難易度にかなりの差があるのも事実です。大学に入学すると同時に専門の学部の授業を聞いて、適切なレポートが書ける程度の力を要求されるようなレベルの高い小論文を課題とする試験がある一方、学力不足を救済するためといわんばかりの「作文」を書かせるような学校もないわけではありません。しかしそのどちらであるにしろ、従来の学科試験に共通の「知識」・「理解力」中心の試験から、「自分を理解させる力=考える力+考えたことを表現する力」をみる方向に力点が移動していることは事実です。そしてこれは現在さかんに議論されている「創造性教育」に直接結びつくものであり、小論文入試は、今後ますます重視されるようになるのではないかと思われます。

大学入試における小論文の出題形式

課題小論文
たとえば、「科学の発達と人間の幸福」・「個性と自己変革」・「バーチャル・リアリティー」等の課題が出され、それについての自分の考えを論述するものです。規制は緩やかですから、自由な発想で書くことができる反面、主観的な文章展開に陥りやすく、また具体性を自分の手で与えなければならないという難しさが伴います。「あなたが今まで最も感動したこと」・「この大学を受験した理由」等の課題を出題する大学もあるようですが、これらは小論文というよりも「作文」と考えて書くほうがいいでしょう。

課題文を読んだうえで書かせる小論文
この型が最も多く出題される形式です。1000 字から 2000 字程度の文章を読ませて、その内容に関連した小論文を書かせるものです。ここでは何よりも出題された文章が「何」について「どう」述べているかを正確に把握する必要があります。つまり文章読解の力もここでは試されているわけです。この形式の出題では、最初の問題で文章の要旨をまとめさせ、その後に筆者の考えに対する受験生の意見・考えを指定された字数で述べさせるという形をとる場合もかなりあるようです。現代文読解能力、とくに「要旨を把握する能力」が成否の鍵を握るとまで言ってよいでしょう。文章中の枝葉末節にとらわれ、筆者が文章全体で述べたいこと(主題)を理解できなかったり、取り違えたりするようでは問題にならないでしょう。なおこの型の問題として、課題文が外国語で出されている場合があります。通常試験の外国語読解問題と同程度、時にはそれ以上の速読の力が要求されているようです。

資料を読み取ったうえで書かせる小論文
ここでいう資料とは、統計資料、グラフ等ですが、過去には漫画を見せて、それについて小論文を書かせた大学もありました。この形式の出題は多いとはいえませんが、次第に数を増していることも見逃せません。統計資料や、グラフがどのようなことを特徴的に表しているかを正確に読み取る力が要求されます。

小論文学習の実際

小論文を書くための学習の内容は、最初に述べた小論文試験を実施する目的から考えて、次のようなものになります。

論理的思考の訓練
大小を問わず論文においては、「文章の論理」によって読む側を納得させることが最終的な目標になります。そのために必要なのは、何よりも「論理的な思考」です。言葉の正確な定義と論理性が基本となります。

思考された内容の適切な表現・伝達方法の訓練
思考された内容を読む側に納得されるように記述する必要があります。用語の選択・文章構成・適切な具体例の提示等が学習の課題になります。

独創的 なものの見方・考え方を身につけるための訓練
自分自身の考え方に対しても常に批判的な目を向ける態度が要求されます。必要なのは「1+1は2に決まっているではないか。」という常識に抗して、「1+1を2と名づけただけのことではないか。1+1= 10 とすることもできるのではないか。」と立ち止まって考える精神です。

自分をとりまく社会・世界に対する関心を養う訓練
世間一般でいう常識だけではなく、日々起こり続けているさまざまな問題に対する関心の有無が小論文では試されます。習慣的な読書が必須とされるゆえんです。特に教育系・医療系の大学での論文試験には、それぞれの方面への適性が判断されますので、専門分野についてのある程度の知識や、その時々のトピカルな話題に対する注意が欠かせないようです。

茗渓予備校の小論文講座

茗渓予備校の小論文講座は、年間を通して44回の授業で小論文の基本から、最高レベルの大学の論文試験に対応する問題まで無理のないペースで学習できるように組まれています。「6人ゼミ」という少人数の授業形態を有効に活用して、一人一人の生徒の論文を丁寧に添削する小論文講座としては理想的な授業が行われてきました。また 11月に始まるAO入試・推薦入試を受験する生徒に合わせたカリキュラムも用意されています。