K I R I
 — 茗渓予備校通信 2022年 2月号

「高木代表より」最終回

共通テストも終了し、いよいよ個別入試が本番を迎えます。焦らず緩まず日頃の実力を存分に発揮してください。コロナ禍で不安がつきまといますが、ここは平常心で臨んでください。第一志望合格を待ち望んでいます。


22年度共通テストの概要

河合塾の共通テストリサーチ(受験者数 487,127人)によれば、1月15日・16日に実施された大学入学共通テストの平均点は7科目理系型で523点(900点満点、前年比-57.8点)、7科目文系型で520点(900点満点、前年比-44.6点)で、2004年以降いずれも最低点となった。特に数Ⅰ・数Aは37.96点(前年比-19.72点)、数Ⅱ・数Bは43.06点(前年比-16.87点)で合計得点を大きく押し下げている。数Ⅰ・数Aは、目新しい問題が多く、解法の方針を立てるところでつまずいている。また、単元をまたいだ融合問題が出題され、高い思考力が試された。数Ⅱ・数Bは、問題文が長くなり(行数で昨年比1.4倍)、読み取るのに時間がかかり、思考する時間があまりとれなかったようだ。また、数学的な問題解決の過程を重視した問題が多かったことも影響している。出題者の苦労は評価できるが、受験生にはきつかったようだ。ここで、各科目の平均点(中間報告)を掲載しておく。

外国語(英語)  
  • リーディング(100点満点、平均61.81点、前年比+3.01点)
  • リスニング(100点満点、平均59.45点、前年比+3.29点)
数学  
  • 数Ⅰ・数A(100点満点、平均37.96点、前年比-19.72点)
  • 数Ⅱ・数B(100点満点、平均43.60点、前年比-16.87点)
国語  
  • 国語(200点満点、平均4110.25点、前年比-7.26点)
理科  
  • 物理(100点満点、平均60.72点、前年比-1.64 点)
  • 化学(100点満点、平均47.63点、前年比-9.96点)
社会  
  • 世界史B(100点満点、平均65.83点、前年比+2.34点)
  • 日本史B(100点満点、平均52.81点、前年比-11.45点)
  • 現代社会(100点満点、平均60.83点、前年比+2.43点)
  • 政治・経済(100点満点、平均56.79点、前年比-0.24点)

とにかく今年は、「数学ショック」と言われるほど数学が難化した。他は、生物が昨年比で-23.83点だったのを除けば、ほぼ昨年並みといえる。英語は大問構成、出題のねらいに大きな変化はなく、多様な英文が出題された。国語はやや難化したが、内容的には昨年をほほ踏襲した問題であった。共通テスト2年目を迎え方向性(情報処理能力+思考力の強化)が見て取れる。高校2年生や1年生も、問題を見ておき今後の勉強の目標を見定めておきたい。


長い間、ありがとうございました

茗渓塾の塾長時代は「学校訪問記」(校長や理事長との対談)を通して、茗渓予備校代表としてはこのコラムを通して、ほぼ40年有余にわたり、受験を軸に日本の教育事情をたどってきました。生涯現役を貫きたかったのですが、体調がすぐれず2年前に75歳で現場を退き、この3月をもって退職いたします。このコラムもこれが最後になります。

振り返ると、小学4年生から大学院生まで、さまざまな年齢の生徒を教えてきました。生徒たちとは、教え教えられというのが実感です。20年ほど前、シャドウワークとしての塾教育を日本の教育行政の視点から俯瞰しておくために、オーストラリアのとある国立大学に日本の戦後教育行政の歴史と特質に関する論文を提出し、修士号を取得しました。身近なところを見直せという、教育関連の著作を数多く出している知人の勧めもありました。

いまや首都圏を中心とする中学入試を、塾の存在を抜きにして語ることはできません。1994年の村山内閣で文部大臣を務めた与謝野馨氏が、塾との会合の席で「文部官僚たちに塾に子弟を通わせているものに挙手させてみたら、ほとんどの者が手を挙げた」という光景がいまでも思い出されます。下村元文科大臣は、確か板橋区議だった時代にを経営していたと思います。

よく保護者の方から、学力が伸びるお子さんの要件を聞かれますが、何にもまして好奇心の旺盛さだと思います。あとは、集中力と持続力でしょうか。子供には注意はしても、感情に任せて怒らないこと。叱るより褒めることが大事です。

では、優れた塾教師の要件はと問われれば、①授業がうまいこと(教える技量)、②市販のレベルぐらいの教材をつくれること、③教えすぎないで生徒に考えさせること、の3つをあげたい。ほかにもいろいろあるでしょうが、私はこの3条件を理想と考えてきました。そして、自分の経験にたよってマンネリ化しないこと、絶えず自己研鑽を怠らないことです。

最近、このコロナ禍にあって、「シニアZoom塾」と称して海外の留学生と「若者たちから学ぶ」集いを開いています。日本への留学生は中国、韓国をはじめ圧倒的に東アジアの若者たちが多いなかで、ベトナム、ラオス、ミャンマー、タイ、カンボジア、インドネシアなど東南アジアの国々から優秀な学生が日本に学びに来ています。落ち目の日本ですが、こうしたアジアの若者たちの学びのハブとして日本が機能することができるように思います。教育立国として世界に貢献したいものです。

長い間、ありがとうございました。皆様のご健康とご多幸を切に願っております。これから大学入試の本番を迎える受験生にエールを送ります。