連休も終わり、いよいよ受験勉強も軌道に乗ってきたものと思います。これからは受験英語に役立つさまざまな情報を掲載してゆくつもりです。

JUKEN5月号では英語に頼りすぎることによるいわゆる「失敗例」を挙げました。「苦手科目から目をそらすな!」とも...。結局このKさんは受験には成功したのですが、「薄氷を踏むような勝利」という意味ではやはり「反面教師」であったといえるでしょう。そこで今回は成功例を挙げさせていただくことにしました。先日の大学受験説明会にも来校していただいた、昨年度の卒業生(Eさん)の例です。

実例は物語る②

Eさんの第1志望は慶應大学・薬学部でした。私が担当し始めたときは英検2級を既に取得していましたから、すぐさま準1級・1級へとレベルを上げました。1級長文など完全に「超高校級」。英語の先生や社会人の方が受験される級ですから、彼女の英語のレベルがわかろうというものです。しかし彼女の非凡さは「英語が優秀であった点」にあるのではありません。むしろ「英語が優秀だとは考えなかった点」にあると言えるでしょう。英語が軌道に乗った高3の1学期、彼女は躊躇せず「数学」と「化学」を「叩き」にかかりました。英語の家庭での学習は、この時点ではほとんどやっていなかったはずです(もっとも「英語はやるな!」との指示を出したのは当の私自身なのですが...)。英語は一度勢いに乗ってしまえば、多少勉強量が減っても力は維持できます。高速道路でトップ・スピードに乗った乗用車と理屈は同じです。アクセルなどほとんど踏んでいなくても、勝手に速度が上がってゆくのです。夏前の模試では何と数学の偏差値が英語のそれを(コンマ数点ではありますが...)凌ぐ場面すら見られました。化学も数学ほどではありませんが、かなりの点数です。模試でもB判定をたたき出しましたので、この時点で私は彼女の合格をほぼ確信するに至りました。通常現役生が伸びるのは冬からであり、まだまだこの時期では浪人生とは勝負になりません。「天下の慶応」で現役生がB判定など「異例中の異例」です。いかにバランスよく取ることが好判定に直結するかがわかろうというものです。もっとも「苦手科目から目そらさない」といっても口で言うほど簡単なことではありません。秋口になってプレッシャーがかかってくると、受験生の10人中8~9人は「得意科目に逃げ」始めます。あたかも水の低きに流れるが如く、人は心安んじられる方向へと流れるものです。得意科目の過去問をやって良い点数を取っていたほうが、安心できるからです。しかしいくら目をそむけても、現実が消えてなくなるわけではありません。「人間、見たいものしか見ない!」とは古代ローマの政治家ユリウス・カエサルの言葉です(ブルース・ウィリス主演の某ハリウッド映画で使われて、一躍有名になった言葉ですが...)が、受験生の皆さんも「不愉快な現実」を直視する勇気を持ってください。

英語ができるようになる方法...単語編①:決して忘れないために...

とはいっても「英語ができるに越したことはない」こともまた事実です。そこでここからは「どうすれば英語の点数が上がるのか?」の方法論に入ります。まずは「単語」からです。

「語学」とは、煎じ詰めれば「単語力」です。単語さえ知っていれば、よほどのへそ曲がりな文章でもない限り大まかな内容はまず理解できるものです。逆に文法にいくら精通していても、単語がわからなければにっちもさっちもいきません。そして上位大学になればなるほど長文の比重が高まってくるのです。これは一つには大学院進学を睨んだものです。書くにしても読むにしても、ほとんどすべての論文で用いられるのは「英語」という言語だからです。一方、範囲を決めての単語テストはあまり意味がありません。直前で頭に叩き込み、テストが終われば「はい、さよなら」となることは目に見えています。ある時点まではそれでも構いませんが、高3となったらそれでは長文読解の役には立たないでしょう。どんな範囲での抜き打ちテストでも対応できる単語力を養成しておく必要があるのです。

では「単語を決して忘れない方法」とは何でしょう。それには「記憶のメカニズム」を理解することから開始しなくてはなりません。人間の記憶には、ある一定の「閾値(しきいち)」というものが存在します。3・11の原発事故以来、この「閾値」の存在なるものが話題になっていますから受験生諸君も聞いたことくらいはあるかと思います。早い話が「放射線はこれ以下なら安全・越えたら危険」というラインのことです。原発推進派はこのラインが「存在する(ライン以下なら大丈夫)。」さらには「ちょっとなら浴びた方がむしろ健康にいい(ホルミシス効果)。」などと主張し、原発否定派は「そんなもの存在しない(ちょっと浴びただけでも有害)。」というのです。一方「人間の記憶」にはこのラインが明らかに存在するようです。つまり「ここまでやれば忘れない。これ以下では何度やっても忘れる。」ということです。あたかもアポロ計画の「サターン・ロケット」や「スペース・シャトル」の打ち上げと同じで、一気に地球の重力圏を振り切ってしまえば、あとはほとんどエネルギーが要らないということです。ではこれを単語暗記に応用するとどうなるでしょう。


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