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  高木代表より  
  KIRI 2008年5月号  
 

和田中学の試み

  杉並区立和田中学校(藤原和博校長)は、今年の1月26日から「和田中学校地域本部」主催による『夜スペ』という、都立の進学指導重点校や私立の中上位校を目指す補習授業を大手進学塾サピックスに委託した。藤原校長は5年間の任期満了により退任し、現在は藤原校長とおなじリクルート出身の代田昭久氏が校長職(いわゆる民間校長)についている。
 この試みは、日本の教育現場に大きな問題提起を行った。NHKは3月8日に「大丈夫ですか?日本の学力」という3時間の大型特集を組み、冒頭、OECDが実施した2006年の学習到達度調査(PISA)を紹介し、多くの日本人の自尊心を揺るがした。2000年の調査では1位だった数学リテラシーが2006年には10位に、読解力リテラシーは8位から15位に転落していた。
 この番組に出席していた藤原校長は、多くの参加者から批判の矢面に立たされていた。たとえ地域本部(保護者の団体)主催ではあれ一私企業が進学のための補習授業を有料(中3週3回で月額1.8万〜2.4万、3年間で36.5万)で実施するのは、公教育の原則に反するとか、教育の機会均等を崩壊させるものであるとか、さまざまな批判が集中した。藤原校長は反論する。成績が振るわない生徒に対しては、教師や学生ボランティアの支援を受けて土曜日寺子屋(ドテラ、年間5000円)を実施しているという。また、生活保護をうけている家庭にはそれぞれ半額にしている。街中の塾へ行けばその3倍〜5倍程度はかかるわけだから、これこそ「完全ではないが、‘公平’な教育機会の提供だと思う」。戦略家藤原氏のガードは堅い。
 私は、今から5年前、同じ杉並区の教育委員会から依頼を受け、都合4回ほど民間の英語教師としてA中学の正規授業を担当した経験がある。指導最終日に校長を含め数人の教師と簡単なまとめの会合を持った。そのなかの一人から「ただで学校に来ている生徒の指導がいかにしんどいかわかりますか」と問いかけられた。生徒一人にかかる公立中学の経費は、授業時間あたり1000円ぐらいだ。ひっとしてこの先生は、公立中学が無償(税金からの社会分配で補完)であることでコスト感覚を麻痺させているのではないだろうか。
 先のPISAでトップの成績を上げているフィンランドで教師をしている日本人女性の話では、なにも特別な指導をしているわけではないという。決定的に違うのは、教師の数が日本と比べて圧倒的に多いそうだ。日本が人材立国を目指すのならば、もっと教育費に公費を使い、質の高い教師を数多く配給することだろう。生徒にとっては待ったなしの学齢期である。 
 

 
 

 

 
     
     
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