K I R I
 — 2018年 10月号

東大が英検など民間英語試験(認定試験)の成績提出を必須にしない方針を決定

 大学関係者の話では、言語能力の尺度に使われているCEFR(セファール)の6段階で下から2番目のA2以上を受験生に求めると決定(この基準は東京外語大と同じ)。その確認方法として、①民間試験でA2以上の成績、②高校側がA2以上の英語力があると認めた調査書など、③障害や病気などによって受けられない事情を明記した理由書―のいずれかを提出してもらうという。東大は今まで、全国50万以上の受験生が参加する試験は、公平公正が担保されない限り賛同できないという立場をとってきた。今回は、敢えて文科省や国大協と事を構えることを避けた内容と見受ける。詳細は、茗渓予備校の「教育ニュース」を参照されたい。

 東京医科歯科大学は東大の方針を見て決めると言ってきた。国大協の会長を務める京大の山際総長は、民間試験を何らかの形で活用したいとしているが、非常にデリケートな問題で、その活用法を検討中という。いずれにしても、志望大学の入試情報をアンテナを高くして正確に入手するようにしたい。

「大学入試改革―テスト学の観点からのふり返りと展望」

 9月8日、久々に学会(テスト学会)なるものに出席させていただいた。議論の全容を紹介するのは、このコラムでは紙幅の都合でとても無理なので、今年の3月まで大学入試センター副所長(試験・研究統括官)としてセンター試験を主導されてこられた大塚勇作氏(京都大学名誉教授)の議論の概要を説明しておくにとどめる。

 ①記述式問題の導入に伴う課題、②マーク式問題の工夫・改善の必要性、③英語の4技能評価の問題点、という論点に絞りこみ「振り返りと展望」を行った。

 ①導入するなら、質の高い問題でなければならない。それをおいても、採点の信頼性とフィージビリティ(実行可能性)の面からみて疑問を感ずる。ベネッセに委託した2017年度の施行試験の採点の一部(4000件から9000件)を検収したところ、国語の第3問で25件、数学の問(あ)で31件、問(う)で23件の採点基準の明確化にともなう補正があった。50万人規模の共通テストでは無視できない数字である。

 ②昨年7月の文科省による「マーク式問題の作問の工夫・改善の求め」にゼロ回答を出した大塚氏は、「正解が一つに限らない問題」に絞って反論した。例えば、CEFRのA1とされた問4(9番 You may choose more than one opinion.)の問題の正答率が14.0%だった。「適当なものを選べ」という解答形式が目立ち、一見、より深い思考を求めていると誤解されるが、実際には1つ1つの選択肢について適否の二者択一をしているに過ぎない。結局、こうした設問形式は、単に正答率と識別力を低下させる機能しかなく、採点上のトラブルにつながる危険性もはらんでいる。

 ③東大WGが提示した(ア)指導要領との整合性に対する疑問・(イ)CEFR換算表の信頼性と妥当性への疑問・(ウ)スピーキングテストの実施体制や採点体制への疑問、の3点の指摘とほぼ同内容である。(東大WGの意見は、茗渓予備校のHP「教育ニュース」を参照)

 文科省に意見具申する「テスト学会」のなかも、文科省寄りの学者と、大塚氏のような抵抗派があり、政治に振り回されているなと変に納得できた一日でした。(もう少し詳しい私のレポートは、HPの「教育ニュース」を参照)。