K I R I
 — 2020年 3月号

未知の新型コロナウイルス感染で混乱する教育界

この欄で民間英語資格試験の導入延期と国語と数学の記述式問題の見送りで混乱した大学入試改革を私なりに追い続けていますが、『大学入試のあり方に関する検討会議』の第4回目は、新型コロナウイルスの感染が日本列島全体に広まり、延期に追い込まれています。若年層の発症は少ないようですが、80歳以上の高齢者の致死率は相当高いようです。各御家庭におかれましては、くれぐれもご用心ください。茗渓予備校の通塾などの最新情報はホームページのトップに掲載しております。

安倍首相による小中高の学校閉鎖の要請のあった翌日、テレビでN高(ネット主体の不登校児用の高校)の様子が映し出されていました。高校卒業資格を取得するための授業はスマホ・パソコンで可能ですが、通学による指導も行っています。昨年、学校訪問しましたが、生徒たちは一人ひとりにぎやかに自分の課題に取り組んでいました。角川ドアンゴが経営する学校法人です。

最初に、誰もいない教室が映し出され、次にパソコン上に生徒たちの顔だけが20名ぐらい映し出されました。全員、ネットによる個別指導を行っていました。現在、多くの学校でタブレットによる指導を部分的に導入しているようですが、今の事態でどの程度活用しているのでしょうか。報道によれば、中国では一億八千万人がネット授業を受けているそうです。今回の教訓は今後どのように生かされることでしょう。

大混乱の大学入試改革(『中央公論2月号』より)
賛成派の主導者である鈴木寛氏(東京大学大学院・慶応大学教授、元文科省補佐官)と反対派の理論的支柱である南風原朝和氏(東京大学名誉教授、テスト理論の専門家)の二人の意見を今井むつみ氏(慶応大学教授、教育心理学)が聞き取り取材を行っています。南風原氏のお話では、当初3人の鼎談を考えていたらしいが鈴木氏が応じなかったそうです。興味のある方は、本誌を図書館で閲覧していただきたいが、立場のはっきりする発言をいくつか抜き書きしておきます。「高校生の学習のありようにトータルに影響を与えているのは、学習指導要領よりも大学入試です。」「確かに、大学入試によって高校生の学びの方向付けをするのは邪道かもしれない。」「文部科学省の若手から、残りの高校生は見捨てていいのですかと怒られて、100%改心し、共通テストに記述式問題を入れることを全面的にサポートし始めました。」(高木注・センター受験者が55万人として、上位15万人ぐらいは高校での学びが変わるという計算)「残りの40万人もAIに取って変わられることなく職にありつけるようにしなければならない。」(高木・共通テストに記述を入れることによって、こんなに簡単に事態が変わるのだろうか。)

それに反し、南風原氏は、問題はもっと本質的なところにあると言っています。例えば、反対派の人も、現状の大学入試選抜は、知識の暗記・再生の評価に偏りがちだと言っていますが、「知識は個人の中でダイナミックに更新・再構成されるもので、知識を使って試行するプロセスを経て、より深い理解を伴う知識が構成されていきます。つまり、知識と思考は双方向的な関係にあるはずです。」(高木注・平たく言えば、中学受験でいやというほど漢字を覚えさせられますが、この知識が中学高校へ進んで、いかに思考を豊かにするかは、小学生から大学院生まで教えてみて私自身よく分かっています。)「(今回の国語の記述式問題は)論理的に整合的かどうかは問われず、特定の言葉が含まれているかどうかという観点で採点されるので、型にはまった解答を促すことになりかねません。」「(つまるところ)共通テストの規模には記述式試験はなじみません。」(高木注・問えない力は試験するなというのが、私の結論です。)南風原氏に加担してしまったようです。