K I R I
 — 2020年 6月号

『大学入試のあり方に関する検討会議』(以下『あり方会議』と略称)ライブを傍聴して

 緊急事態宣言が解除され、東京都は6月1日(月)から学習塾の営業自粛を緩和しました。茗渓予備校も、それに合わせ対面指導を始めることにしましたが、希望される場合はオンライン指導を継続することもできます。

 それにしても来春の大学入試はどのように実施されるのでしょうか。大学入学共通テストは今の時点での内容変更は出来ないようで、従来の方針通り実施されるはずです。ただし、文科省では、共通テストを含め大学入試の日程を2週間から1ケ月ほど後ろ倒しにすることを検討中とのことです。

 文科省本庁で開催されている『あり方会議』をかねがね傍聴したいと思っていたところ、第7回(5月14日実施)がユーチューブでライブ配信されることを知り、2時間半ほど拝聴しました。

 この回は、外部の有識者や高校生代表の出席もあり、たいへん興味深いものがありました。ただ、どうした訳か第5回目以降、議事録は存在せず、毎回それまでの概要が載っているだけでした。新型コロナに関して『専門家会議』の議事録が存在しないことが国会でも問題になっている矢先、安倍内閣官房の指令で議事録を残さない方針が各省に通達されたのかとさえ勘ぐられます。尾身茂副座長は発言者の名前を出すことは構わないと言っておられるし、それは政治の問題だと明言されている。この『あり方会議』には、私の知り合いも出ておられるが、発言者として名前を出されることで自由闊達に発言できないとは思われない。なにを恐れているのでしょう。

   前の号で触れた、9月入学の導入は、自民党の提言もあり、政府として拙速を避けたいというスタンスに舵をきりました。コロナ対策の相次ぐ不手際などで支持率の低下もあり、それどころではないというのが実情でしょう。日本教育学会の反対声明や、刈谷剛彦氏(オックスフォード大学教授)の研究チームによる9月入学にかかる膨大なコストの報告があったりして、あっさり「前びろ」の姿勢を引っ込めてしまいました。大学入試改革の破綻からわずか半年で、またもや受験生を振り回す結果となりました。

 今回の『あり方会議』に出席した日本若者会議の2人の高3生はともに英語4技能の判定を一つのテストで評価するのではなく、それぞれ役割分担をした形で、例えば記述を個別試験で判定するなどして評価すべきという趣旨の発言をしていました。この二人からは9月入学の話は出て来ませんでした。

 今回の『あり方会議』の議事録や概要はまだ公表されていないので、ライブを聞かれた方々以外、何が問題となったのかよく分からないと思いますが、4名の有識者の提出された資料は見られますので、興味のある方はぜひご覧になってください。その中でも、新井紀子氏(国立情報研究所教授)の「記述式問題のあり方」は一読に値します。論点を簡単に紹介しておきます。

  1. センター試験のメイン利用者は国立大学から私大にシフトしている。
  2. センター試験の成績は、ほとんどの科目で「ふたこぶ」化している。(成績の2極化)
    したがって、記述式試験を個別試験で課すことができる国立大向けではなく、センター試験(今後は共通テスト)のみで入学可能性の高い受験者、とくに私大偏差値50±10の受験生に対し適切な出題ができているかどうかを議論すべきである。
     新井氏は従来から、教科書の読めない中学生が半数以上存在し、高校生になっても「汎用的読解力」は上がっていないとエビデンスを提示しながら主張してきました。
  3. 教科書が読めないから、プリント学習や塾に頼らざるを得ず、経済格差や地域格差がそのまま学歴に反映されている。大学入学を目指す以上、少なくとも教科書を自力で読み、ノートが取れ、レポートを作成する基本的能力を身に着ける必要がある。
    具体的には、記述式試験を行わない(行えない)大学の受験生をターゲットにする。その際、業者の採点はあくまで「参考採点」とし、答案の画像ファイルを出願大学に同時に送付する。
 かなり、具体的な提言となっています。