K I R I
 — 2020年 12月号

大学入試センター・シンポジウム2020「センター試験をふり返る」

このシンポジウムはビデオ会議ソフトZoomを使って11月25日に駒場の大学入試センターで開催された。共通1次試験及びセンター試験が実施された約40年間の総括を通して,大規模共通試験の課題を浮き彫りにし,来春から始まる大学入学共通テストなど今後の改善の方向を探るための議論を行うことを目的としたもの(山本理事長)で,約350名の大学・高等学校関係者等が参加した。私も参加させていただいた。

第1部「大規模共通試験の総括」では,荒井克弘大学入試センター客員教授(前々試験統括官)から「ボーダレス化する高大接続」,大塚雄作国際医療福祉大学大学院特任教授(前試験統括官)から「センター試験問題の作成と課題」,鈴木規夫前大学入試センター研究開発部准教授から「センター試験志願者の受験行動と学力特性」,前川眞一大学入試センター特任教授から「成績データから見たセンター試験」と題した研究報告があり、その後,南風原朝和東京大学名誉教授及び駒形一路静岡県立浜松北高等学校教諭からの指定討論を踏まえて,山地弘起大学入試センター試験・研究副統括官の司会による,全体討論が行われた。この中の4人の方とは面識があり、ネット会議とはいえ、多少はそれぞれの思いを感得できたと思う。

第2部「大規模共通試験の運営」では,義本博司大学入試センター理事(文科省高等教育局長から出向)から「大規模共通選抜試験を成り立たせる仕組みとその課題」と題した報告があり,その後,木村拓也九州大学大学院人間環境学研究院准教授からの指定討論を踏まえて,全体討論が行われた。

全体で5時間半に及ぶシンポジウムで、年末までには当日の記録などが大学入試センターのホームページで公開される予定だ。議論の詳細は、その議事録(?)を参照いただくこととし、私のほうでは、とくに議論の核心にあたる部分だけを独断を顧みず、私なりの視点から報告しておく。

① 独立法人大学入試センターの独自性に関して
作問の内容に関してまで、行政側(文科省等)が口出しをし、結果としてセンター自身も行政主導を後押ししてきたのではないか(大塚、南風原)。この問題は、今回の学術会議をめぐる6委員の任命拒否と相通じるものがあり、専門家の意見が尊重されない風潮がすけて見える。ちなみに、共通テストの骨子が形成される過程で当時の統括官であった大塚氏の意見はまったく反映されていない(大塚)とのこと。一方、文科省から出向している義本理事は、独立法人とはいえセンターも政府の1機関なのだから、その方針に従うべきだという趣旨の発言があった。さらに、各大学や国大協の主体性のなさも指摘された。センター試験の反省と評価が十分になされないまま「非業の最期」(南風原)をとげ、共通テストに乗り換えた感が否めない。だからこそ、こうしたシンポジウムや総括が必要なのだが、今回も、どの程度今後の教育行政に生かせていけるか心もとない。

② 未出願者が13万人という実態の意味するもの
2018年度には試験を受けながら大学へ出願しない「未出願者」数が58万人中約13万人に達した(鈴木)。とくに首都圏、愛知、東北に多い。これは高等学校や教委の指導のせいなのか。5教科を受ける国公立大出願者の「中核層」(26万人)と、一部の教科だけを受け私大に出願するものと未出願者を合わせた「新参入者」(29.4万人)との分化が進んでいる(鈴木)。今後受験生が漸減するにともない入試センターの経営危機が迫っている。科目数を減らすなど対応が課題になりそうだ。

③ 出題者を高校教員主体に変えては、というつぶやき
センター試験は、各大学の主体的参加が前提であったはずだが、1991年の教養部の廃止に伴い、各大学は独自試験を作成する能力を失い、多くの私大も含め共通テストに依存している。高校の授業がわかると答えた高校生は5割(国立教育政策研究所調査)だった一方、全体の8割が大学などに進学している。基礎力の判定であれば舵を切り替え、作問も高校の教員主体で行ってはどうか。入試と学力調査は別物だ(荒井)。本来、受験生の多様化に対応するため、中教審の答申では「学力評価テスト」と「基礎学力テスト」に分かれていたものを最終的には「共通テスト」一本に絞っている。現在は約460名の大学教員が年間40日から50日センターに出向して作問にあたっている。

④ 二次試験での入れ替わり率の問題(木村)
二次の個別試験で得点差のつきやすい問題を出題することで、一次の合否が逆転する比率が高いか低いか、一次で逃げ切れるかどうか、そうした研究も大学入試センターと各大学で共同研究する必要性があるのではないか。興味ある提案。

⑤ センター試験の正答率
センター試験の正答率は6割、共通テストでは5割が目安となっている(この数字ははっきりとはどこにも記述されていないが)。今回の共通テストでは、国語や数学の正答率は相当低くなりそうな気配なので、試行試験の形式に慣れておく必要がある。また、英語のリスニング力を高めておく必要もある。

受験生の皆さん、コロナ禍のなかで受験勉強も大変ですが、日々の体調に留意しながら全集中で突破してください。