K I R I
 — 2019年 11月号

英語外部試験導入は5年先まで延期

今回は来年度の入試を展望する予定でしたが、11月1日、英語の外部試験導入延期が閣議後の萩生田文科大臣から突如発表され、ここで私なりのこの問題に対する見方を記しておきます。

安倍内閣は、閣僚の辞任が相次ぐなか、文科大臣の「身の丈」発言がきっかけとなり、与党内部からも反対の声が大きくなるなか、文科省を押し切る形で2024年をめどに抜本的な制度見直しをすることに決めました。1日は共通IDの発行申し込みの受付開始日でもあり、高校側の担当者は憤りさえ覚えていました。それにしても、生徒不在の今回の措置は腹立たしいばかりです。2020年度実施を強引に進めてきて、2024年度まで5年も延期しなければならない重い問題を抱えていたことを実施主体である政府・文科省は猛省しなければならないでしょう。もっとも、新学習指導要領で大学受験を迎えるのが2024年であり、現中1生がここに当たります。日本の教育内容は、この学習指導要領につよく規制されて運用されています。

2016年8月に、文科省は2024年度から現行の英語試験を廃止して、民間試験に全面移行すると発表しました。そこまでの移行期間として、23年度までは共通テストと民間試験を併存させるという案(大学側はどちらを優先してもいい)を出しましたが、なんと国立大学協会は、この両者の受験を義務付けるという忖度をしてしまいました。今回のごたごたの一因は、予算を文科省に握られている大学の弱い立場にも由来するものであると見ます。

もう一つ、文科省は、大学改革―入試改革―高校改革を一体として変革しようとしていることも考えなければならないでしょう。大学入試と高校のカリキュラムは別物と言ってきた文科省が、ここへきて「入試が変わらなければ高校は変わらない」という施策の大転換に踏み切ったことです。この見方は世間でよく持ち出される俗論ですが、正論から言えば、しっかり学習要領を練り上げ、年度ごとに検証しながらその結果を踏まええて共通テストを作成する一方、入試問題(本試験)は大学側が主体的に入学してほしい質の生徒を想定しながら作成するはずのものです。英語教育に詳しい鳥飼玖美子氏も言及しているように、かなり昔から「コミュニケーション英語」を標榜してきたにもかかわらず、学校現場ではあまり成果が出ていない現実も考えなければならない。また、鴎友学園のように中学で英語の授業を英語で行っている先進的な学校もありますが、学園トップのお話では、ほかの学校に広がらないので教師陣が共同して研究会などを開く機会もないそうです。ガラパゴス現象です。

ここで、簡単にいままでの経緯を振り返ってみます。

2013年5月に、「教育再生実行会議」はセンター試験廃止を打ち出し、以下の3点を柱に新テストを構想しました。

  1. マーク式を記述式に全面移行し、CBT(コンピューターに基づくテスト)で試験を行う。
  2. 共通試験を複数回実施する。
  3. 現在の教科型に加えて、合教科・合科目の問題を導入する。

これらは、ことごとく実現されていません。まず、この会議の構成メンバーのなかには現場の先生方がほとんど入っていないせいか、日本の教育現場を踏まえていない荒唐無稽な、フランスかどこかの外国のことかと見まがうばかりの違和感をおぼえます。日本の教育行政をかじ取る中教審の専門部会としての「高大接続システム改革会議」に下すと、問題点が噴出して、上記3本柱はほとんど跡形もなくなってしまいました。その時点でも、委員の方から外部の民間試験の話は一切出ていなかったと聞いています。まるで急ごしらえで、4技能とか外部テストとかいう切り札?が飛び出してきたように見えます。

延期はいいが、それでは試験の設計として、センター試験で出ていたような発音やアクセントの問題とか語句整序問題は復活するのか、リスニングと筆記試験の配点を100点・100点のままにするのかどうか、各大学の対応がどうなるのか、後始末が大変になります。とにかく国と大学は、早急に国民に対して方針を打ち出すことを切望します。この問題は、また別途追跡していきます。