大学受験のリディング語の技能分野を大まかに分けるとすれば、リスニング(L)・リーディング(R)・スピキング(S)・ライティング(W)に分けることができます。また、日本の大学入試では非常に重視される、和訳という技能もあります。またその前段階として文法や語彙があります。今回からこれらの技能を大学受験というテーマと絡めながらお話ししていきたいと思います。第1回目はリーディングです。

英語長文問題は常に入試英語の首座を占めてきました。英語は理数系・文科系いずれにおいても重視されており他教科に比べて配点も高い場合が多く、英語の長文問題の出来は入試の合否に大きな影響を与えます。入試英語のスタンダードとして、センター英語科試験があります。また、国公立大学を受験される生徒さんにとって最大の山場である国公立大学入学試験があります。そして、タイプは違いますが国公立大学入学試験に匹敵する難易度の早慶の大学入学試験等、様々な試験の中で英語長文問題は登場します。

センター英語科試験

語彙文法レベルは高校卒業レベルの英語力に相応した内容が試されます。高校卒業レベルの受験者に適切な語彙文法レベルが用いられ、しっかりとしたパラグラフ構造(注)を持つ良文が多く、設問についてもパラグラフごとの内容をしっかりと理解できているかを試す試験で構成されており、各パラグラフのトピックセンテンスを把握することが正答に直結します。センター試験の長文問題は配点が大きいため、これらを確実に正解していくことが求められます。また、一般に高校卒業レベルとされている英検2級との語彙文法の関連性が多く見受けられます。

国公立大学入学試験

国公立大学の一般入試ではセンター試験後に志望大に出願して各大学の個別試験(2次試験と呼ばれる)を受験します。最近の国公立大学入試問題は読解問題の占める割合が大きく、問題が長文化している傾向があります。また、こうした長い英文を試験時間内に読んで解答するためには、相当の速読力も必要になります。書かれていることの要旨を短時間で読み取ることのできる力をつける必要もあります。センター英語科試験と同様に、各パラグラフのトピックセンテンスを把握することが正答に結びつくことが多いのですが、センター英語科試験との大きな違いもあります。センター英語科試験が全問マークシートの試験であるのに対し、国公立大学入学試験は記述式であるため和訳問題に加えて要約問題が出題される等、国語科試験との類似性も指摘されています。

難関私立大学(早慶)入試問題

センター試験や国公立2次試験と比べると、早慶上智の英語問題量は総じて多く、長文を一字一句読んでいると時間切れになってしまう受験生も多いのではないでしょうか。文章のポイントを全体の流れの中で的確に判断する速読力・情報処理能力が求められます。ただし質問に精読を要するものが含まれている場合もありまので全体は速読法で大事なポイントを浮かび上がらせ、設問がらみの部分は精読法で処理するという複合的な読み方も必要になります。早慶の語彙・文法レベルは英検準1級レベルとほぼ同等です。英検準1級の語彙は短大卒業レベルとされています。さきほどお話ししました速読力・情報処理能力と併せて、高校生にとってはかなりの難関レベルと言えます。

リーディング考察

「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能の1つとして、良質な英文を継続的に読むことの、英語力向上に与える影響ははかりしれないものがあります。良質な英文を読むことで語彙力が身につき、また文法単元の体系的理解が深まるという大きなメリットがあります。また、長文読解演習の中で英文の速読(ここでの速読とは斜め読みや飛ばし読みではなく、精読のスピードが速いことを意味します)の能力を養成することができます。

大学入試問題の長文問題は教養あるネイティブ・スピーカーが新聞や雑誌、インターネットを利用して読む良質なコラムや小説からの抜粋が使われています。これらの英文を読みこなすには当然のことながら膨大な数の語彙が必要となります。早慶上智レベルの入試過去問題で使われている語彙レベルは準1級レベルまで含まれています。このような長文に対応するための語彙力増強の対策として、ほとんどの生徒が単語帳を使って(高2からターゲット1900の学習を義務付ける学校が多いようです)地道に暗記作業に励むことになりますが、この「砂を噛む」ような作業を苦手とする生徒はかなり多いように見受けられます。語彙を身につけるためには、あるコンテクスト(背景)の中でどのようにその単語が使われているのかを意識しながら身につけていくことが大切です。そのようにして身につけた語彙力はしっかりと定着して忘れにくいという効果があるとともに、なによりも即戦力を発揮します。語彙力は、できるだけ多くの良質な英文を読むことで、コンテクストを利用しながら適切な使い方を理解しながら覚えることはたいへん有効な方法の1つでしょう。この作業を補う方法としてターゲット1900等の単語帳を利用すると効果はさらに大きくなります。単語帳を使った暗記作業とコンテクストの中から語彙力を定着させる作業を組み合わせることによって、単語の適切な使い方まで理解することができます。良質な英文を集めた長文読解演習の中で、パラグラフリーディングや英文の速読(ここでの速読とは斜め読みや飛ばし読みではなく、精読のスピードが速いことを意味します)の能力を養成することができます。これらの能力は大学入試問題に取り組むときに大きな効果を発揮することはもちろんのことですが、その後(高校卒業後・大学の講義において・また将来の職業で英語を使う場面において)を見据えた英語力向上の観点からも必要とされる能力です。


にほんブログ村 英語ブログ 英語講師・教師へ