英検のすゝめ 茗渓予備校では英検受験を推奨しています。しかし「英検なんて...」とのご意見や、単に「学校や塾で言われたから...」と受験されている方も多かろうと推察します。それではモチベーションも上がりませんし我々の指導方針もご理解いただけないと思います。そこで今月号では「英検長文の利点」を論理的に整理しました。議論の拡散を避ける為にここでは「2級以上」に限定します。つまり「大学受験の準備としての英検長文」という位置づけです。

大学入試は「単語力」と「読解力」で決まる!

大学入試の英語は極論すれば「単語力」とそれに裏打ちされた圧倒的「読解力」です。文法問題は上位大学になるほど減少しますし配点も低くなる。無論受験は1点差で合否が決まります。文法問題で1点でも多く取れるに越したことはありません。しかし優先順位となると「まず読解...」となるはずです。しかも文法はある意味「一夜漬け」が可能な分野。一方5000語の単語を一晩で覚えることは、残念ながらできません。高1高2では単語・読解を中心に鍛え、高3になって文法中心に追い込みをかける...といった、「緩急を自在に使い分ける」勉強法が有効です。そのための英検長文の活用です。

どうして入試で「読解力」が重視されるの?

明らかに「大学院入試」を睨んだもの。どんな論文も、使用されるのは「英語という言語」だからです。「英作文はどうするの?」という声も聞かれます。しかしこれすらも読解能力が基本です。すでに「ブログ」に書きましたが、英作文は「物まね」です。自分勝手に英文を「発明」されては困るのです。ですから「どれだけ多くの文章を読んだか...」で、「どれだけ正確な英作文が作れるか...」が決まる。結局これも「読解力」と「単語力」に収斂されてくるわけです。英検はリスニングを別にすれば、「単語力」と「読解力」でほとんどすべてが決まる試験。「仮想・大学入試長文」には、まさに「うってつけ」というわけです。

それでも国立大学の「英作文」には不安が残る!

準1級と1級にはエッセイも課されます。特に1級のエッセイはテーマを与えられ、それについて自分の考えを論理的に述べる形式ですからかなり高度です。こちらでトレーニングしてから国立大学の英作文に移ると簡単に感じます。特に日本人はシャイなので英作文が苦手です。既にブログで書きましたように、「どうせ俺の英文なんて...」となるわけです。また一斉授業の予備校などでは、なかなか一人ひとりの英作文を添削しているわけにはいきません。「模範解答は分かったけど、私の英文は一体何点もらえるのよ?」ということです。ですからなかなか日本人学生の英作文は上達しないのです。裏を返せば茗渓個別の生徒さんは「英作文でこそ差がつけられる!」ということです

「英検」と「大学入試」では出題形式・内容が異なるのでは?

確かに完全にイコールではありません。しかしそれは英検に限ったことではないはずです。国立と私立でも天と地ほども形式が違いますし、同じ国立でも東大と京大では出題形式はまったく違う。高3になった時点で「受験する大学の過去問にあわせた勉強法に切り替える」というのは当然の話です。特に英検長文は面白い半面、「即物的・具体的」であるが故に「哲学的・抽象的概念」のものを取り上げないという弱点を内包しています。しかしそれは最後の1年で調整すればいい話であって、そこに至るまで「どうやって足腰を練り上げてゆくか...」という話です。

「大学入試長文」と「英検長文」の違い

「英検長文は2級までとして、いきなり大学入試長文を読む...」という選択肢も考えられると思います。しかし実際の大学入試問題は単なる長文読解にとどまらず、「文法・語法」・「発音・アクセント」・「イディオム表現」などが複雑に絡み合った形で設問が構成されています。これらいわば「重箱の隅をつつく」ような知識がないと、文意だけ理解できても点数にはなりません。そしてこれらの知識は高3になって初めて身に着く類のものなのです。また途中に(  )などの「虫食い」が何か所も存在し、非常に読みにくくなっています。以上の理由から中3・高1あたりでは、入試問題はまだまだ避けた方が賢明です。

一方英検長文は非常に読み易く、知的好奇心を刺激するようにできています。「新しい科学的発見」や「社会の変化」をリアル・タイムで取り上げているからです。「科学はこんなところまで進歩しているのか!」と驚かされたのも再三再四。しかも年3回の試験がありますから、その即時性は他の追随を許しません。今やお馴染みの「ウィキペディア」、山中教授の「iPS細胞」、最近話題の「3Dプリンター」なども、筆者が初めて目にしたのは英検長文でした。「勉強の基本は楽しむこと!」と、かつて私は「日本史の勉強法」で書きました。「楽しんで勉強している奴、趣味として勉強している奴には絶対敵わない!」とも...。楽しみながら社会の変化に触れ、さらに読解力や単語力をつけるという、まさに一石二鳥・三鳥というわけです。とくに最近の若者は一般常識に不安が残りますので、こういった機会を設けることは不可欠です。また英検長文で取り上げられた内容が、のちに大学入試長文で採用されることは言うまでもありません。

TOEICや TOEFLなどの資格試験はどうなの?

「仮想・大学入試長文」としてはお薦めできかねます。前者は「就職資格試験」です。高校などでは盛んに受験を薦めますが、内容が「ビジネス英語」に偏りますからちょっと「?」マークです。一方後者は「アメリカの大学留学用」。大学受験と内容的には近いのですが、「文法」が難解なので、中3ではまず歯が立ちません。一方「長文」は英検と似通った「学術的内容」で面白いのですが、こちらは逆にちょっと簡単すぎ、英検2級レベルです。ただ分量が多く、その意味では「質より量を重視」の試験と言えるでしょう。以上の点から、どちらか強いて選ぶとすれば「後者」でしょうが、これらの受験は大学に進学してからでいいのではないでしょうか。受験すること自体は無論無意味だとは思いませんが、検定料は「かなり高い」ということは覚悟しておいてください。

英検を利用した大学入試へのロード・マップ

茗渓では中3で2級を取得される生徒さんが数多くいらっしゃいます。しかし既に書きましたように、大学入試問題を解けるようになるまでにはまだまだ「役不足」。そこで高1・高2でやっておくべきことは、「準1級・1級へと駒を進めること」です。2級は「高校生」の受験級でしたが準1級は「大学生」の、1級は「社会人」や「英語教師」の受験級。ですからこのレベルを一気に攻略してしまうことによって、桁違いの語彙力・読解力を身につけることができるのです。マラソンで言う「高地トレーニング」。敢えて負荷をかけることによって、通常のトレーニングでは得られない大幅なパワーアップを図るわけです(当然この時期は細かいテクニックは度外視です)。スポーツ界では常識ですが、学問の世界で何故採用されないのか、不思議で仕方ありません。せっかく中学で2級合格という快挙を成し遂げながら、高1・高2でみすみす「英語力を低下」させているのです。その根底には「英検と大学入試は無関係」という事実誤認があることを知るべきです。下界に降りてくるのはレース直前でいいのです。準1級はできれば受験して欲しいですし、1級はその必要こそありませんが長文だけは読んでおくべきでしょう。

英検長文「読み方の注意」

どんなに面倒でも「全文口頭和訳」が「大原則」です。最初は2時間の授業で1段落読めればいい方です。しかも子供たちは青息吐息。しかし焦ってはいけません。いい加減な読み方で量だけこなしても「当たった!外れた!」に終始し、一向に点数はあがってゆきません。しっかり文構造を捉え、正確な和訳を心がけてください。詳細は今月号のブログに書きました。

「間違いだらけの英検2級合格法」

英検2級に合格するための方法論をまとめました。高2や高3になれば「横綱相撲」で寄り切れるかもしれませんが、中3あたりではまだまだ戦略をたてることが必要です。そういった生徒さんを対象に書きました。こちらもJUKENのブログをご覧ください。






筆者が茗渓予備校で英検を指導し始めて、かれこれ10年以上になるでしょうか。2級にも100名近い生徒さんを合格させてきたと思います。その10年を振り返る意味も含めて「英検2級合格法」をまとめてみました。ただしこれは筆者が個人的にとっている手法であり、個々の先生によって多少の違いがあることは予めお断り申し上げておきます。

間違いだらけの「英検2級合格法」

「まず目標を設定し、そこから逆算して今何を成すべきかを考えよ!」とは、何度も引用するようですが、東大医学部卒の精神科医・和田秀樹先生の言葉です。英検ほどこの言葉がぴったり当てはまる試験もありません。2級の合格点は46点。21世紀になってからこの点数を1点でも上回ったことはないはずです。「英検は6割合格」と言われていますが、75点満点ですから正確には「6割プラス1点...」ということです。無論回により数点ボーダーが下がることはありますが、そんなものは当てにしてはいられないので、このボーダーを最低限クリアする戦略をたてないといけません。

まず着手すべきは「リスニング」です。リスニングは2級でも準2級でも「日常生活の内容」が基本であり、それほど差はないからです。ここで何点取れそうかをまず計算します。リスニングでの得点が大きければ大きいほど、筆記での負担が軽減されます。最低でも「6割」を取ってください。30点満点ですから6割は18点です。不思議なことに筆記試験のでき具合に拘わらず、リスニングがこの18点を1点でも下まわると合格率がガクッと落ちる傾向にあります。1点くらい筆記でいくらでも取り返せるはずなのですが、それでもなぜか不合格になる確率が急に高くなるのです。問題作成において一体どういう操作がなされているのでしょうか。「神業」としか思えません。いずれにしてもこの18点を最悪でも死守すべく、トレーニングを積み重ねるしかないでしょう。リスニングの注意点はすでに先月号で触れた通りですので、JUKENのブログのバック・ナンバーを参考にしてください。

次に「筆記試験」です。問1は「語彙問題」ですが、これは最後に回した方が賢明です。準1級でも1級でもそうですが、英検ではこの「語彙問題」が「最大の難所」なのです。特に「英検1級単語」は「悪名高く(?)」て有名です。筆者が「ターゲット1900の暗記を楽しむ人のために...・」を執筆したのも、ある帰国子女の生徒さんにこの「英検1級単語」を攻略させるためでした。いかな帰国子女といえども学校の勉強もあるのです。1級単語を「丸暗記しろ!」とは言えません。そこで「語源を遡って覚える・類推する」という方法を考えました。これがなければ私がこの本を執筆することも、ラテン語や古代ギリシャ語を始めることも、ひょっとしたらなかったかも知れません。話をもとにもどします。2級でも攻略法は同じです。筆記でまずやるべきことは、「長文読解」と「文中で出てきた単語の暗記」です。「単語は文中で覚える」が基本であることも、アフリカ旅行の例を出して昨年書いたと思います。また「英検2級単語集」も同時並行で覚えてください。単語集の暗記は「筋トレ」と同じです。万が一のときには「致命傷」を防いでくれるかもしれません。

長文読解は、私の場合基本的には「全文口頭和訳」であることも書きました。その際、文中に文構造の「書き込み」を入れさせて和訳の準備をさせるのです。慣れないうちは1段落訳すのにも2時間かかります。しかし焦ってはいけません。徐々にスピードはアップしてゆきます。これは英文の構造に慣れてくるからです。例えばIt is~と来たら、「それは...」というパターンはまず稀で、だいたいが「仮主語itの構文」です。ですからIt is~を見た瞬間、後ろに真主語(to do)を探しにゆくようになるのです。こういった「条件反射」が読解時間を短縮してくれる。これは大学入試長文でも同じです。時間を決めて何度もトライしてゆくうちに、徐々にスピードが上がってきます。最初は何度やっても10分足りなかったという生徒さんが、試験直前には「何度やっても10分余るようになった」と言っておりました。

また選択肢は「振り込め詐欺」です。どれも「それっぽい」ことが書いてありますので騙されてはいけません。「最後の時には偽預言者がキリスト(救世主)の名を騙(かた)って現れる...」と、聖書にある通りです。本物と偽物は「紙一重」なのです。コツは「1つ選ぶ」のではなく「3つ消す」こと。そのためには文中に必ず「裏を取り」に帰らなくてはなりません。当然文章中には夥しい「書き込み」が残ることとなる。綺麗な問題用紙のままの人を時々見かけますが、「全滅」の可能性もありますから注意が必要です。

この「長文読解」と「語彙力養成」は何カ月も時間がかかります。いい加減な形で量だけこなしても、一向に力はつきませんし点数も上がらない。しかしここで地力をつけておけば、大学入試問題にもすぐ移れますからじっくり焦らず「練り上げ」ていってください。また最後の長文4Bと4Cは、「どちらかが難解だと、どちらかが簡単」になっています。普通は4Bが難解であることは容易に想像できるでしょう。4Cを難解にしても「足止め」の意味がないからです。こういったことも戦略的に頭に入れておくといいでしょう。大学入試でも使えます。

次は「並べ替え問題」です。これは5点分ですし、受験英語の構文のようなものを出題されたら中3では「お手上げ」です。しかしここで1点でももぎ取っておかなくては、最後の最後で「1点差に泣く」ことにもなりかねません。そこでよくよく見ると、中3でもできる問題が1つか2つは必ず含まれていることがわかります。その問題を確実に取ることです。コツは「必ず英文を書いてみること」。よく数字だけ並べている人を見かけますが、どうしてこれで並べ替えができるのか不思議です。その後並べ替えた英文を「穴があくほど」見つめます。すると「どうしてもありえない並び方」に気がつくはずです。たとえばto heという並びは英語であればまずあり得ないはず。そこでそういう並びにならないように「一工夫加える」と、正しい英文になるようにちゃんと問題が作られています。英検の出題者も「人の子」ということです。これは国立大の「英作文」のところでも書きましたが、「自分の作った英文から目をそむけるな!」ということです。「あとちょっとのところで正解...」というところまで来ているのです。中3であれば5点中2点取れればもうけもの。3点取れれば「大金星」です。

最後は「鬼門」の「語彙問題」にもどります。これは20点分ありますが、10点取れればいいでしょう。中3や高1で12点を越えることはかなり難しいと思います。ただし一桁だけは取らないようにしてください。あとは他の問題の出来次第です。「語彙問題もぎりぎり」・「リスニングもぎりぎり」だと、「読解問題」がしわ寄せをくらって相当な正答率を要求されることになる。この20問中純粋な「単語」問題は11~12点分程度。最後の3問は「文法問題」。真ん中の5~6問が「熟語」です。熟語はまだまだ分が悪いですから、できれば「単語」と「文法」で得点するようにしたいもの。無論「熟語」で取れるにこしたことはありませんが、「単語暗記」で手いっぱいの中3では、ざっと1000はあると言われる「熟語暗記」まではおそらく手が回らないと思います。いずれにしても「どこで何点取っておくか?」の戦略は一人ひとり違うはず。自分自身の英語力に合った戦略を練り上げ、是が非でも46点にもってゆくことです。それでは健闘を祈ります。


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